日本の水ビジネスの問題

水ビジネスの市場はこれから大きな広がりを見せることは確実である。
それは環境問題ともリンクしており、人間が経済生活をする限り水は汚れる。
その水を浄化し、水の自然サイクルの中に上手く溶け込ませ、水需要の安定供給を行うことが必須となる。

これからも世界が経済成長を続けていくとするならば、水の安定供給、効率的な利用はある意味化石燃料の供給や利用よりも切迫した問題である。
水には代替する物はないのであるから。
環境汚染、気象変動などによる水需要の逼迫と裏表に関係にあるのが水ビジネスである。
この危機が深刻であるがゆえ、投資も積極的に行われ、市場規模も一気に巨大なものへと成長していくのである。

日本政府は新成長戦略として、水関連インフラの輸出をその柱の一つとしている。
現在の水ビジネスの世界は欧州の水メジャーが占有し、その牙城を切り崩すのは容易ではない状況である。

確かに日本企業や自治体は、ろ過膜技術、生物処理、化学処理による水浄化技術、水道メンテナンスにおける世界トップレベルの漏水率といった、優れた技術を持っているのである。
しかし、日本の問題は、そのハード面の強さは民間が持ち、漏水率の低さを維持するメンテナンス能力は自治体が持っているという状況にあるということである。

つまり欧州水メジャーのように包括的なサービスを提供できるような存在が日本には存在しないのである。

水ビジネスの世界で最も収益を上げるのはサービス部門であり、使用するごとに上がってくる水道使用量が大きな収益となる。
下水処理についても同じである。利用者がそれを使用しつづけるかぎり、安定して収益が上がるのである。

インフラの整備、コアデバイスの提供は言ってみれば「売り切りビジネス」であり、水ビジネスの中では大きな位置を占めるものではない。
日本の場合、このサービス部門のノウハウが自治体に集積されていることが大きな問題である。

現在、自治体と企業がコンソーシアムを組み、海外水ビジネスへの進出へ動き出している。
しかし、サービスの質が高いといわれる自治体の水道事業においても、その高コスト体質をいかにして下げていくかが今後の課題であり、ノウハウの民間との共有により、より効率化されていかなければ、海外水ビジネスにおける成功も中々難しいであろうと思われる。

日本政府の水ビジネス国家戦略におけるPPP戦略とは

日本政府でも、水ビジネスに関しては国、自治体、企業の連携が薦められている。
特に縦割りと批判の大きい国の省庁間においても横断的な連絡会として国土交通省国際建設推進室、厚生労働省水道課、経済産業省水ビジネス・国際インフラシステム推進室による「海外水インフラPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)協議会」が2010年7月に開催され、水ビジネスの世界に関しては、オールジャパン体制でいくことを方向づけている。

PPPとは公共で行っていた事業に民間の効率的な運用を取り入れることで、収益性を上げていくとする考え方であり、官の中の縦割り行政を無くすだけではなく、官民の連携を強化し民間の活力を大きく利用しようとするものである。
この動きのベースとなっているのは昨年6月に閣議決定されている「新成長戦略」である。「アジア経済戦略」を柱の一つとして、その中に上下水道インフラ輸出を重視する政策をとるとされている。

更に自治体においては、独自に民間企業と連携し、海外への技術支援の動きなどが活性化しており、先日は北九州市がカンボジア・シェムリアップ州の州都シェムリアップ市における浄水場建設の設計事業を請負うなど、日本の自治体としては初の受注に成功している。
その他、東京都、大阪府、横浜市、名古屋市なども水道事業を第三セクター化し、海外水ビジネスへの動きを活性化させている。各自治体とも民間企業との連携を行っており、今回の北九州市の場合は、浜銀総合研究所との共同事業となる。

そして、水ビジネスが主に途上国、インフラの整備されていない国相手に行われるという点。
そして包括的なビジネスを目指すに当たって、巨額の資本が必要となるというリスクがある。
その投下した資本が果たして回収されるのかどうかというのは、民間企業にとっては大問題である。

また自治体レベルであってもそれをカバーしきれるものではないであろう。
その点において日本政府は、2010年12月に外務省の外郭団体である国際協力機構(JICA)を窓口とする政府開発援助(ODA)を10年ぶりに復活させている。
これも民間の投資リスクを軽減させるという動きであり、日本企業がより動きやすい環境を作るための下地つくりといえるものである。

このような動きはここ数年急速に展開してきたものであり、現時点では計画段階であるものも多々あり、実際の自治体による海外水ビジネスの受注実績は北九州市の1件のみである。
それも包括的な水ビジネスに結びつくかどうかはまだ分からない状況といえる。
このオールジャパン体制はまだ始動したばかりか、これから始動の準備を開始するものが殆どである。
サッカーでいうならばやっとアジア予選を勝ち抜けるだけのチームつくりの方向性を目指し始めたということである。海千山千の相手に勝利を挙げることができるのかどうかはこれからの動き次第であろう。

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